【予約受付中】【小説】愛とか恋とか、くだらない。(3)
それぞれが気付く思い。期末テストが終わり、本格的な夏の訪れとともにもうすぐ夏休みがやってくる。
祐真は、同じ図書委員である沙雪の「小説を書く」という密かな目標に付き合うようになっていた。これは二人だけの秘密の関係。それもあって、沙雪との心の距離が次第に近づいていることにほのかな充足感を覚えていた。
そんな祐真にはひとつの懸念があった。
つい先日、手を上げるほどの喧嘩をしたという奏音と涼香の二人のことだ。奏音はそんなことがあったことなんてケロリと忘れているかのようだが、一方で涼香は奏音に対して棘のある態度を隠そうともしない。
何かあれば涼香から相談があるだろうと静観を決める祐真。この日の休み時間も祐真の教室に、奏音たち一年生が押しかけてきていた。
「皆で夏祭りに行かない?」
菊司のこの提案にクラスメイトは歓声を上げる。黒髪にイメチェンした奏音のここ最近の人気ぶりはすごい。下心満載の男子たちを適当にあしらう奏音の姿を見て、苦笑する祐真。だが、その時――
「僕はどちらかといえば、彼女より涼香ちゃんと仲良くなりたいな」
菊司の聞き逃せない呟きに、祐真の心はざわつく。そして、生涯忘れられない夏休みが幕を開けた。