【予約受付中】【コミック】多聞さんのおかしなともだち(上)
「きみが、自分が……人に、どんな名前で呼ばれたいんか、教えてやーー」子どもん頃。
うちには母の友人達がしょっちゅう遊びに来とったけど、わたしはたぶん、この人に一番なついていた。
うちに遊びに来る、母と母の彼女の友人達には、女の人が好きな女の人も、男の人が好きな男の人も、男の人が好きな女の人も、どっちのことも好きな人も、どちらでもない恋人がおる人もおったけど。
多聞(たもん)みたいな人はーー。いつだって一人で、口を開けば多聞にしか見えない友達のことばかり。
妖精、妖怪、ぼうちに魔女。
人間よりも、幽霊やおばけが好きな人。
こんな妙な大人は多聞だけ。多聞、あのおかしな人だけだった。
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他の人には見えない、人ならざるものとの会話を愉しむ、妙な大人、“多聞”。
レズビアンの母達と暮らし、誰を愛しても祝福される環境で、誰のことも恋愛として愛することができないと悩む、“内日(うつい)さん”。
そして、内日さんの呼びかけに応え出現したものの、自分の名前を忘れてしまった不思議な仔、“多聞の友達”。クィアな家庭で育ったアロマンティックの子の、繊細な揺らぎ。
自分のことを、あなたのことを、わかっても、わからなくても、ここにいるという事実を語り合うことがきっとできる、ひと夏の不思議な、大阪の物語。